安気な住まい:多摩ニュータウンの空き家活用について民間で何ができるか?

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多摩ニュータウンの空き家事情を再確認してみると、公的賃貸住宅として供給されている都営住宅では空き家が殆ど発生しないが、UR賃貸や公社賃貸では市場家賃とのバランスが崩れると大量に空き家が発生する。それも臨機応変な対応が緩慢なUR賃貸では半分が空き家という賃貸団地もあり、適切な市場性が生かされていないケースがある。大家がURである場合や都公社である場合には地元の民間事業者では対応できないので、何時まで経っても空き家は埋まらない。相当、思い切って家賃を下げなければ空き家は無くならないのだが相変わらず空き家を温存している。それが現実だ。内装も設備も十分だし管理もしっかりしているのにもかかわらず入居者がいないのは、単に家賃が民間より高いということに他ならない。だから民間の力を借りて空き家を埋めるなどは出来ない。

こうした状況と異なるのは民間の団地やマンションになる。多摩ニュータウンには民間の賃貸住宅はないので、個人が所有している団地内の住戸が賃貸物件となる。子育てのために長期に渡って使用したものが子供が独立して高齢者のみの住まいになっている。特にエレベーターのない団地での居住は生き続けることの出来ない環境にもかかわらず、移動することも出来ずに困難な居住を強いられている。経済的にも移動することも出来ずに、健康だけを維持しようと必死の状況だ。運よく団地の建替が出来ればバリアフリー化も可能だが、現実はそうも行かない。

こうした住み続けることが運命づけられた団地では、住み続けるための覚悟を具現化するために建物の改善に取り組んでいる。サッシの取り替えにより複層ガラスにより断熱性能を上げようと投資をする。外断熱改修を行おうと国の補助事業を確保しようと努力する。合意形成の難しい中で何とか総意を得て改善に取り組む。環境整備を整えようと電線類の地下化を実現した団地もある。全てが住み続けることができる団地であるために共同で努力する。

しかし、個別の住戸の改善はこれからだ。たとえば自らの住まいを賃貸して家賃収入を得ながら、その家賃で高齢者サポートのある賃貸住宅に住み移ることが出来れば安心だ。その為の自分の資産の生かし方を高齢者は知らない。相変わらず80㎡の住戸に独りで住むことを余儀なくされている高齢者には30㎡のコレクティブ住宅に住み移ることを奨めたい。そのために現在の住まいを賃貸物件として商品価値のあるようにすることを支援したい。そのためのノウハウは不動産業者にもあるはずなのだが、そこまでの知恵は回らない。ならば私達が応援しよう。

また、中古マンションの売買に際しても内装などの更新はするが、中古市場において、購入者にはむしろ個性的な改装ニーズが発生する。こうしたニーズに対して、現状では不動産業者の関連事業者がサービス提供を行うことになるのが一般的だが、そこには売り手側の一方的な価格設定や価値観の押し付けという買い手側のニーズを十分組み入れられない状況がある。そこで、仲買の不動産業者に対するサポート共に、中古マンションを購入する側の居住性を支援する仕組みが必要になる。それを生み出す中間的な組織が必要になる。

多摩ニュータウンにはこうした内装専門の設計者やコンサルタントが蓄積されている。さらにそれを請け負う工事業者も育っている。従って、それらのニーズとシーズをマッチングさせる事業体があれば、相互の要求を結びつけることができる。そこに地域のビジネスチャンスも生まれるし、地域のストックのグレードアップにも繋がるのである。今後の地域のストック活用のマーケットとして住まいのグレードアップキャンペーンを展開する活動が期待される。

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このページは、秋元孝夫が2013年2月12日 07:06に書いたブログ記事です。

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