むかしむかしの時代は高齢者の子どもとの同居率は高かった。大家族制が当たり前だった頃の話だが、その頃は高齢者が独りで生活することが難しかったとも言える時代。近くにスーパーも無いし百姓しながら自給自足で味噌や醤油を作っていた時代を想像すると、高齢者のみで生活するなんていうことは考えにくい話しだった。それが次第に便利になり、高齢者の一人暮らしだって出来る時代になったので単身高齢者世帯や高齢者のみ世帯が増えてきたという考え方もできる。だから高齢者の子どもとの同居率が下がっているのは、社会の利便性であるという考え方である。
一方、社会的な規範などを根拠とした説明もある。戦後、この方核家族化が進んでいて、その後の核分裂というか、子供が独立して行く課程で高齢者世帯が増えてきたという考え方である。とりわけ団塊世代は友達夫婦も多く、子供の独立に伴い夫婦のみで生活するケースが増えていることや経済的にも親を頼れないという考え方が広がって、互いに独立する意識が強くなっての結果だという判断もある。
図は1986年と1998年の都道府県別の比較で、東北や日本海側に高齢者との同居が多い傾向が見えるが、急速に子どもと高齢者の同居率が下がっていることを物語っている。たかだか12年間の間に10%も下がっているという状況は何だろうと考えると、それはバブル経済の到来だったように思えてくる。1986年はバブル前のギリギリの年。翌年から何だか地価上昇が急速になってきて抑制できない物価上昇や景気の高揚に国民全員が踊った時期があった。その時に親と子は分離したと想像するとわかってくる。とりわけ団塊世代を中心として持ち家に走った。
親の建てた古い家の隣に子供が家を建てるケース。近所の建売を買うケース。少し通勤に便利なマンションを購入するなどの方法で親との同居から独立したと想像できないか。特に地方では隣接しての住宅建設のケースが増えたように思う。実態調査はやっていないので想像での話だが、こうした住宅建設が増えた関係で建築基準法にも連担建築の法改正の根拠になったのではないかと想像する。
もし、親との同居ではなく、敷地内に新居を建設するという考え方が普及したとすると、実質的には高齢者と子供の同居が少なくなったと考えることは間違いではないかと思う。それが明らかに出来る統計データが確か住宅土地統計調査にある。『住宅の所有の関係(5区分), 家計を主に支える者の年齢(5区分), 別世帯となっている子の居住地(7区分)』というのがそれで、バブル期前後の動きを見てみるとその実態が明らかになると思う。残念ながらバブル前のデータが電子データとして公開されていないので少し調べなければならないが、その当たりから真相を探って見たいと思う。