カレンダーの組み合わせで9日間の連休になるという正月休みを利用して『帰省ラッシュ』が始まっている。一時期、帰省が少し下火になったと感じていたが、このところ、お盆休みや正月休みの帰省客が増えているようにも思う。帰省といえば、都会に出た子どもたちが田舎の両親に会いに戻るという流れだが、今やその両親も都会に住んでいるので、帰省そのものは次第になくなっていく運命にあるのかと思っていたのだが、ここに来てなにやら盛り上がっているように感じる。
笹子トンネルの事故もあるが、格安航空路線の増加や新幹線の延伸、高速バスの多様化などで、公共交通利用の選択も広がっていて、価格も選択ができる時代になりつつある。確かに移動しやすい条件は整っているとは言え、そもそも帰省客そのものが減っていくものだと思っていたら、実はそうでもないという現実に驚いている。
国土交通省には観光庁があって、観光情報を提示している。その中で『観光統計コラム「知って得する観光統計コラム」』というコーナーがあって『第5回「混雑vs姑」帰省したくないホントの理由は?』という掲載が合ったので紹介する。ここでは基本的に帰省したくない理由を説明していて、以下抜粋――「帰省はできればしたくないので、あまりしていない」という人が12.7%、帰省はできればしたくないが、できるだけするように心がけている」という人が27.5%います。すなわち、約4割の人が帰省に対してネガティブな印象を持っているのです。――となっていて、帰省はしなければと思って入るが、実際は出来れば止めたいという心根が窺い知ることができる。
そういう私も以前はせっせと帰省をしていたのだが、両親が他界してからは一切しなくなった。毎年のように数十万円の費用を掛けての帰省は、確かに負担でもあり義務でもあったように思うから、出来れば自由になりたいと願うのは、当然といえば当然で密かに心に抱いていた。だが、実際、帰省をしなくなってみると、少し肩の荷が降りると共に、何か物足りなさも感じてしまうのは故郷に対する郷愁なのかもしれない。だから、それ以降は帰省の代わりに正月前に海外旅行を企画することが多くなったし、子どもたちも独立するとさらに帰省の感覚も遠のいていくことになった。いや、そろそろ子どもたちが帰省してくるのかしらんと思ってもいるが、まだまだそこまでにはならないので、気楽に人生後半の旅に出るのだろうと思っている。
最近、近所では孫や子が団地の両親を訪ねている帰省の姿をよく見かけるようになった。多摩ニュータウンの団地であるから東京なのだが、四国から帰省している人や北海道からの帰省など、地方から都会への帰省も見える。集団就職で都会に出た人たちが今では都会に居を固め、その子どもたちが地方で家庭を作って、都会に帰省する姿もまた、新しい帰省の姿。渡しの場合はそんなことも無いので、気軽に過ごしているが、帰省される方も意外と負担になってくるのではないかと、余計な心配をしてしまうのは私だけではあるまい。