2013年1月アーカイブ

余っている容積率を活用する方法第二弾として賃貸住宅を建設することを提案したい。というのも公的組織が分譲した団地の多くはエレベーターがない。民間ならば目一杯立てようとするので必然的にエレベーターは付くのですが、公的な組織の計画は中層が望ましいという考え方で計画しているせいか、5階建てまでの建物が多い。そもそもエレベーターの設置義務は建築基準法などの法文には謳われていないのですが、なぜか6階になるとエレベーターが設置されるという不思議がまかり通っています。いや正確にはそうではなく、各住戸までが5層で有ればエレベーターはいらないと言う暗黙の取り決めがあるようで、斜面に建っている7階建ての3階に道路からのメイン階段があるマンションにもエレベーターが無いし、5階と6階がメゾネットになっている団地型マンションにもエレベーターがない。要するにアプローチ階から5層まではエレベーターが必要ないとなっているようです。

実は建築基準法にエレベーターの設置が登場したのは平成7年に国の長寿社会対応住宅設計指針に6階以上に設置義務を謳ったのですが、実は昭和26年に公営住宅法が制定されて、関連の建設基準に6階以上のエレベーター設置基準が示されていて、その後の公的な住宅建設では特に言われなくても厳密に基準を守り続けていたことになります。ちなみにエレベーターの設置義務は中国では7階以上だと聞いていたしヨーロッパは6階建てのリスボンのホステルにはエレベーターが無かったし、ロンドンの5階建ての社会住宅に外付けのエレベーターが増設されていたので、もしかしたら統一されていなかったのかも知れません。何はともあれ、高齢者が増える中でエレベーターの設置は時代の要請です。25年前に私の関わった3階建ての民間マンションには油圧式のエレベーターを付けましたので、公的な住宅のみが遅れていたという事になりますか。公的機関の習性で、何かに習わなければ決められないという実績主義と言うか右へ習えというか、前例主義が長年日本のエレベーターに基準を与えていたとすると、これもまた凄いことでもあります。

かなり本題から外れたようなので、本題に戻すと、エレベーターのない団地に今更エレベーターを付けるのはナンセンスなので、空き地にエレベーター付きの賃貸マンションを建設しましょうという提案です。高齢者等のバリアフリーな環境が必要な人には、コミュニティを離れることなく住み続けられるようにエレベーター付きの賃貸住宅を管理組合が建てるのです。そして団地内の高齢者等が移り住み住み続けるのです。家賃は所有している住宅を賃貸して確保しても良いし、売却して移ることも出来ます。また、所有している住宅を担保に生活費を捻出するリバースモーゲージも活用できるでしょうし、マンションには融資しないと言うのならば、管理組合が胴元になって融資することも可能です。何れにしても機のあった方々と生活を続けることの出来る環境を守り、継続して生活することが必要なのです。

自分たちで建てた賃貸住宅は土地が只なので家賃も低く抑えられます。内部で使う場合は割安な設定も可能でしょう。100年使える建物ならば殆ど修繕費程度の家賃で貸すことも可能でしょう。投資した資金を100で回収することを前提に家賃を設定すれば市場家賃よりかなり安くなるはずです。そこでは共に過ごすための仕組みとしてコレクティブ住宅にもなるでしょうし、必要に応じて認知症のサポートも導入したりシングルマザーとの共生も可能でしょう。コミュニティのまとまりは様々な可能性を生み出します。それは大きな家族の始まりなのですから・・・。

予測というものは未来を診るためには絶対的に必要な情報になる。とりわけ「住宅」を考える上では基本的なものとなる。というのは家族の姿と住宅の姿が相関することに他ならないからだ。

そこで、未来の家族はどのようになっていくのかを単純に「核家族」と「単身世帯」で比較してみた。すると現在、核家族の数はピークに達していて、今後は減ることが予測されている。そして単身世帯がドンドンと増えていくことが見えてくる。となると今後のテーマは単身世帯のすまいということになる。

この場合、一言で単身世帯と言っても、学生の単身から高齢者の単身まで様々で決め手がないが、ここで単身世帯が増えている背景を見定めると以下に整理できるだろう。

? 高齢単身世帯が増えている。

? 晩婚化、未婚化の進展で単身者が増えている。

? 離婚の増加で単身世帯が増えている。

? シングルマザーなどの増加で単身化が早い。

? 別居結婚も増えていて単身居住が増えている。

? 老親との同居から単身化するケースも多い。

? シェアハウスなどの普及で、親元から離れる若い人が増えてくる。

単身化する要素は多々あるが、それぞれに住まいの形も選択も変わってくるように思う。最近はやりのシェアハウスならば、都心に近い一戸建てや広いマンションが拠点になりそうだし、高齢者にはシルバー用の介護付きなどの住まいも提供され始めている。晩婚化や未婚化でのシングルの増加や別居結婚の場合は、独立した生活の場を確保しているケースも多く、もともと独りでの生活を積極的に望んでの単身化なので、それを結びつけることは意味を持たない。こうして考えるとシングルの共同住宅を必要とするのは若い結婚前世代か高齢者ということになる。だから若者のシェアハウスやシニアハウスが広がっているという読みもできる。

こうして見てくると、単身世帯の住宅のニーズも見えたし、その住宅供給も拡大すると思われるが、何かが抜け落ちているのではないかと思える世帯がいることに気付く。それは将来の単身世帯化に気がかりな世帯であり、単身で子育てしているひとり親世帯の存在だ。

何れ子供は成長し独立する中で、親が取り残されることになるが、そこに未来の選択のジレンマがある。「親を残しては結婚できない」「子が独立したら独りになる不安がある」「子育て後の単身生活が長くなる」「親付きの子供は結婚が難しい」などなど様々なハードルがありそうなのがひとり親世帯の未来。そこに共に住む住宅を提供することで、未来を明るくすることは出来ないのだろうか。

現実の子育てにも悩みは多いし、身近に相談できる人がいることは心強い。だから他人でも一緒にいると何かと便利。そして子育ては、住まいを気にし始めてから、せいぜい高校を卒業する10年から15年が山。それを過ぎれば子供は親を離れる。いや離さなければ心配にもなる。だからシングルマザーも心の中では親離れをさせようとする。しかし、子供が親を見捨てるようにも思えて離れなれないのだが、互いに同居し続けると子供の婚期も遅れることにもなりかねない。そこを何とか回避できるような住まいがあるといい。

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