安気な住まい:持ち家率が高いってどうなの?

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「家が欲しい人は地方が良い」というのは真実で、歴代の富山県や秋田県、福井県は東京の倍位違う持ち家状況がある。わざわざ借家に住む理由を探さなければならないほど持ち家化が進んでいて、代々家を継承している世帯も多い土地柄。そこに借家を見つけるほうが難しいといった雰囲気もある。

実は持ち家率高位の三県で嘗て都市計画の調査仕事に携わった者として、とりわけ公営住宅の計画をしていた立場から見ると、「賃貸住宅も機能していたなぁ」という感想がある。その時の公営住宅の役割は、子供が成長して結婚をすると、まずは住む家が必要になる。最初から同居という訳にも行かないので、これといって住みたくなる民間のアパートが見つからない場合に公営住宅に入るという選択だ。実は地方の新しい公営住宅は鉄筋コンクリート造のなかなか視野れたデザインの建物が多い。それも有名建築家のデザインだったりするので、むしろ民間アパートよりかっこいい。おまけに家賃も安いので、子供が生まれて、ダブルインカムの生活になるまでは公営住宅に入居するというのがパターンになっている。

さすがに、ダブルインカムでは公営住宅の入居基準を遥かに上回るので、実家に同居するか離れに家を建てるかで子育て支援に親を活用するというのが常套手段のよう。持ち家の多い地方ならではの住まいの循環である。ここでは公営住宅は低所得者のためと言うよりは、分家して子作りをするための産小屋的な位置づけ。決して住宅困窮世帯ではないように見受けられるのが地方の公営住宅の実態。

富山で見た例はこれまた東京では考えにくい公営住宅の利用方法だった。長く市の職員が市営住宅に住み続けていて、定年退職を期に中心市街地部に新しく出来たシルバーハウジングに夫婦で入居しているというパターン。市の職員が長らく市営住宅を社宅のごとく使っていて、最後は市営住宅でもあるシルバーハウジング・プロジェクトの特典を受けて居住するという一連の流れは、どちらも低所得で住まいのない困窮者に提供されるはずの公的賃貸住宅が、現役時代にはそれなりの給与をもらい大枚の退職金をゲットして、しかも三段重ねの年金を受け取りながら税金で建てた民間を凌駕する品質の住宅に守られて住み続けているという選択は、いやはや住まいの処世術からすると、あっぱれという他無い。いや、これを見て見ぬふりをしている行政側に同僚を守りぬくという友達思いの精神があったのだと思うと心温かいと考えていいのか、現場を見るとわからなくなる。

持ち家率の高い地域では公営住宅は、古い住宅は別として、新築の建物は普通の民間賃貸住宅よりも高級な住まい。新築だから当初の家賃も比較的高くなるので、本来の低所得層は入居せずに入居基準を何とかクリアーした婚約者や就職間際の若い世帯が入居希望を出すことになる。だから新築公営住宅は倍率10倍にもなるのに古い公営住宅では空き家が目立つというバランスの悪い状況になっている。なんだか公営住宅の供給そのものが不公平を生んでいるようで、住宅政策の矛盾を感じてしまうのは私だけではないはず。概して持ち家率の高い地域にこうした矛盾が生まれているようだが、これは国の全国一律の政策そのものの問題にようにも見える。

これを逆手にとると、東京にいるよりも富山や秋田や福井に引っ越すほうが豊かな生活が送れるように思うのは間違いなのか・・・・?

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このページは、秋元孝夫が2012年10月 9日 23:09に書いたブログ記事です。

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