『家は男の甲斐性』だという刷り込みに、何とか持ち家をと頑張ったお父さんは、定年退職後はやはり家に拘ってしまう傾向があるように思う。「俺の家」という意識が環境の変化を望まない選択肢となってしまうのは、ある種の呪縛とも言えるだろう。悲しい刷り込みが生涯を左右するようになるとは、自覚しているか否かは分からないが、男は自分で不幸を創る動物のようだ。特に戸建住宅に住む高齢者はいけない。だって戸建住宅団地の高齢化が止まらない。
多摩ニュータウンでも団塊世代が集中する戸建住宅団地の高齢化は顕著で、多摩市聖ケ丘4丁目では、このまま行くと、65歳以上の高齢者が半数を超えるのはまもなくだ。『人が主(あるじ)と書いて住(すまい)』だと思わされた男は戸建住宅に拘った。こうして一家を構える世帯には、子世帯が近隣に住むなどの関係が見えるが、男やもめに子との同居は難しく、時々、孫を連れて娘が遊びに来るが、息子は寄り付きもしなくなる。孫もある程度成長すると爺を相手にするのはかなわんと、次第に寄り付かなくなる。そうなると『男やもめにウジが湧く』の例えのように、家も荒れてくる。
私も含めて団塊世代の生き様をどう考えるかは意外と決めつけが難しい。子育てのために取得した戸建住宅だから、そう簡単には手放せないという気持ちもあるかと思えば、「エエッ、再婚するの?」なんて出来事もある。人は独りでは生きていけないことは承知していて、何処かで仲間探しをしているはずだから、そうした切っ掛けさえあれば、家にこだわらずに生きられるはず。もっと社交的になればいいのにと周りからは思うのだが、男のシャイな部分が、みんなと住むには邪魔。俺俺意識の気取りの部分が出てきて、普通に溶けこむことができない状況が見える。
『男おひとりさま道』上野千鶴子著には、様々な男の生き様を例に、生きる勇気を奮い立たせる切り口が散りばめられている。その中で「男おひとりさま道 10カ条」を提案されているのでご紹介しよう。
第1条 衣食住の自立は基本のキ
第2条 体調管理は自分の責任
第3条 酒、ギャンブル、薬物にはまらない
第4条 過去の栄光を誇らない
第5条 人の話をよく聞く
第6条 つきあいは利害損得を離れる
第7条 女性の友人には下心をもたない
第8条 世代の違う友人を求める
第9条 資産と収入の管理は確実に
第10条 まさかの時のセーフティネットを用意する
以上の10か条を守れますか諸兄。これには上野氏の並々ならぬ男性への愛情が注ぎ込まれていて、これを守れば幸せの人生が待っているのだと思う。ただ、人間だから、酒にも溺れるし、女性にも下心を覚えるのは当然のこと、そんな自然な心を否定して聖人君子を求めるのも酷な話。まあ、程々に教訓としておいて、できないことはできないというスタンスで生きていくほうが健康を保てそう。まあ、とりあえず、戸建住宅に住んでいる男やもめさんには、出歩くことをお勧めしたい。まずは、家をでることから始めよう。