コーポラティブ住宅をスムーズに推進する為の課題は二つある。一つは参加者募集であり、今ひとつは土地の取得である。コーポラティブ住宅は共感するメンバーが集まっての家づくりだからコミュニティが当然必要となり、少なくとも選定する土地を有効に活用できるメンバーが必要になる。実際の数あわせにはなかなかハードルが高いので、地権者の経営する賃貸住宅と組み合わせるケースが、事業を早期に達成するためには必要な手段である。しかし、土地の位置などで参加者と折り合いが付かない場合はご破算になるケースもある。
こうした土地選びの難しさに対する方法としては多摩ニュータウン内にある都市機構や東京都の土地を購入するという手段も可能である。たとえば多摩市にはURが売却している小規模敷地が多摩市落合や鶴牧にあり、コーポラティブ住宅には適地である。また、稲城市や八王子市圏域にも購入可能な土地はあり、こうした土地を確保する方法もできる。住宅開発をビジネスにするディベロッパーなどの思考方法は、あくまでも土地を仕入れて販売するという考え方で、売れ残りリスクを背負うものだから販売価格にリスクを相当乗せて販売することになる。しかし、コーポラティブ住宅事業では購入者が土地を購入する仕組みだから販売リスクは無くなる。ただし、土地を個人で購入する訳には行かないので、「永山ハウス」の場合は首都圏不燃建築公社に間に入ってもらい実現した。
民間の地権者とのコラボレーションの場合は、地権者との共同事業とするため、借地などの手法も用いて事業スキームを組み立てる必要がある。地権者の利益、参加者の利益などを調整しながら最適な取り組みを生み出すことになる。また、条件によっては中古物件の再生なども視野に入れた計画が可能で、大規模にコンバージョンした住宅計画も可能である。このように民間とのコラボレーションは土地の買取から中古建物の活用に至るまで多様性があり、また農地などの取り込みや施設との同居などの可能性が広がり、状況に合わせたアレンジが出来るという点では優れている。
何れにしても土地の選定に際しては参加者が整ってからの交渉事になるので、最初の段階から土地を模索することは最終的に最適な土地を選定するためには既成概念を植え付けることになり、「土地は語らず生活を語る」というスタンスで安気な住まいづくりを進めていくことが寛容である。まずはコミュニティ形成があって初めて土地の候補が生まれてくる。今後の社会情勢を考えると、都市機構などの小規模な土地については売れないと思えるし、民間の地権者も、まもなくやってくる大地震を予感させる状況では、むやみに建物を建てることに慎重になる。ましてや住宅余りの時代に賃貸住宅を供給しても入らないと言うリスクを背負うには無理があるという状況である。今後は住み手が決まってから土地や建物を利用するという手法が現実のものになる時代が来ている。むしろ売り手市場ではなく買い手市場のマーケットが生まれてくると考えている。
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