持続可能な住まい作りを進める中で、今回は共に暮らせる住まいを提案している。第一弾の「浄瑠璃プロジェクト」は個別住宅の団地的集合体。戸建て風タウンハウスタイプのセミデタッチドハウスと4戸のフラットの6棟の組み合わせ団地。コミュニティも住戸単位での付き合いになり、日常的な挨拶よりは週末的なイベントが中心となる。第二弾の「永山ハウス」は1階の共有部分を通じて日常のコミュニケーションが可能になった。挨拶のみならず自ずと1階で会話が始まる。1階ホールの大テーブルにはお裾分けの品々が揃う。そして外部からのアクセスも盛んで集会所は毎日にぎやかである。そして第三弾としての「安気な家プロジェクト」である。
第一弾では単身高齢者の参画は無かった。第二弾では1/3が単身世帯でその中に高齢者単身世帯が殆どを占めた。集合住宅は小規模住戸を可能にして43?から105?の住戸の混在を許した。結果として新婚世帯から子育て世帯、熟年家族、高齢単身世帯まで様々な家族が寄り添った。おまけに1階には訪問医療も手がけるクリニックとレストラン、そして住民を見守るNPOが入所して生活を支える環境が整った。しかし、事業的には分譲タイプであったため一時的な費用を負担できる家族しか入居できないと言う制約があった。世代を越えたコミュニティが形成されたのだが、そこには後継者の居ない高齢者が居住する余地は無かった。
居住者による土地購入が前提であったプロジェクトは賃貸居住を許さない制約が出る。当初から参加者が運営する賃貸住宅を作る場合もあるが、無理して住宅ローンを組む世帯にはハードルが高い。「永山ハウス」はスケルトン部分の1階を店舗に利用することで建設費の負担はあるものの、賃貸料収益でマンションの管理費と修繕費を賄うシステムが出来た。しかし賃貸住宅までの投資は難しい。とりわけ分譲の中での賃貸利用は利用者意識がどうなのか、運営にはリスクが有りそうである。恐らく賃貸需要は有ると思うが、当初からマンション購入者に理解を促すことは困難だと思っている。
従って第三弾は賃貸でのコミュニティか、賃貸と分譲の合体を狙っている。地主と入居者の協同事業としてのコーポラティブ住宅である。多摩ニュータウン周辺には土地を有していて有効利用できていない地権者が多い。比較的便利な土地でも駐車場として利用していたり、農地のように使っていたりと未利用地が散在する。宅地並み課税を避けて生産緑地として課税を軽減している土地も多く、相続税対策や就農の限界を感じている地主も多い。こうした地主達はアパート業者から賃貸住宅建設を勧められて賃貸物件を建設する例が多く見受けられるが、空き家リスクは不安で、「借り上げ補償」という言葉に騙されて、将来的な付けを残すことになる。こうした地主に対して入居する人が決まっているコーポラティブ住宅造りでコラボすることをお勧めしたい。
持ち家と賃貸の共存は若い世代から高齢者までの混在が可能だ。マンション形式の地権者分譲タイプの事業で有ればリスクが回避され、購入者も原価で購入できる。地主としても賃貸入居者が決まっているのだから安心して賃貸住戸を供給できる。空き家リスクも永続的な入居者が居ることで不安は解消されるしコミュニティがしっかりしている分、将来的な建物管理にも不安はない。おまけに企画段階で居住者の必要な施設を整備することも出来るし、住まいの形も多様に展開できる。子育て支援と単身高齢者の安心居住のコレクティブ住宅だって実現可能だ。本来の住まいの原点である、多世代が集まるコミュニティこそが目標なのだ。
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