「持ち家派か賃貸派か」の議論は永久に続きそうにも見えるが、そろそろその議論も終焉を迎えそうな気配だ。というのも家が余り始めているし、親が所有する住宅に子が住むケースが増えている。つまり家を“買う”のではなく“貰う”ことが普通に成りつつある中で、分譲か賃貸かの議論は間が抜けて聞こえる。こんな風に言うと、家を受け継ぐ可能性のない人には憤慨される方も居るとは思うが、実際、私の周りでも子供を自分の所有する住宅に住まわさせている熟年世代が目立ち始めている。だから子供は建物の維持費と固定資産税のみを支払えば住まいに対する負担は無くなるという寸法だ。
実は日本国中が人口減少と世帯数の減少を始めて居るのだから、住まいは必然的に余ってくるし、建物は維持管理しなければ朽ちて来るのだから、「使ってくれる人さえいれば只でも良い」という状況に確実になる。実際、建物とは違うが農地については後継者が居ないので畑が荒れるのを防ぐために、只でも良いから借りて貰い、耕してくれる人を求めているケースは至る所にある。畑も一端荒れてしまうと回復は大変なので、結果として維持管理さえして貰えればと言うことになる。それと同様のことが住まいについても発生している。
そもそもすでに全国的には平成20年段階で空き家が13.1%に達している。その5年前が12.2%だったのと比較すると5年間で0.9%も上昇しており、その前の5年間の家余り上昇率0.7%だった事も併せて考えると、空き家の増加はスピードを増していることが解る。そして今後は世帯数が減ってくるのだから、家余りも急速に顕在化してくることになる。より実感として確認すると、空き家率の計算は住宅数に対して利用されていない住まいの率なので、コミュニティとして見ると10世帯のコミュニティに対して1.5戸の空き家がすでに有るという計算になり、それがどんどん増えていくのだから物騒で仕方が無いという事にもなっている。すでに過疎地というよりは地方都市では空き家が目立っていて、特に借り手の居ない賃貸住宅に空き家が増えている。
やがて賃貸経営者の維持管理費用や固定資産税などの支払いが困難になると、その資産価値も崩壊してくるのは目に見えている。そんな現象の一端が越後湯沢の中古マンション10万円の状況に現れている。こんな話は湯沢だけの現象ではなく全国至る所で現れてくるのであり、別荘などの空き家を除いても12.4%が居住用住宅の空き家であり、空き家は金食い虫であることを知ると「維持管理費さえ払って貰えば良いから使って欲しい」となる。重ねて言うが世帯数が減ってくるこれからはますます空き家が増えるという時代なのだから、「持ち家派か賃貸派か」という議論はそろそろ終えて、本当の住まいのあり方を見つめ直す時期だと考えている。その時には新築だとか中古だとかという議論も含め、既存の住宅ストックを如何に利用して真に求められる住まいを造っていくかが問題になり、本来の住まい作りが可能になると思う。
やっと住宅双六の呪縛から解き放される時代がやってくるか・・・。
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