安気な住まい:これから始まる大レース

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「人口減少が日本を変える」という。人口減少時代の始まりは地方都市が衰退して大都市一辺倒になるのか、それとも地方の核都市が台頭して来るのか、都市間競争が始まりそうな気配。すでに南国沖縄には人口集中が続いているし東京圏でも人口増が顕著だし、大阪も大展開しそうな状況。人々は何処に行くのか、その行く末が見えない。だから不安が地方を中心に広まっている。とりわけ東日本大震災の影響は東北を中心とした各都市には厳しい条件が突きつけられた感もあり、必ずしも全国一律の推移ではないと予感されるだけに各都市の未来が描けないことに焦りを露わにしているようだ。

今後の日本の人口減少のスピードと規模は戦後の人口増加をミラーで反転させたような動きとなることが人口問題研究所で推計されている。戦後の人口増加のスピードに遭わせて市街地が拡大した様子は多くの人の記憶に残っている。それが反対のベクトルとして日本全土を襲う。取り残される人や市街地が発生することは容易に想像できるし、人が集まるところと集まらないところが発生して、ホットスポットとコールドスポットが顕在化する。すでにイギリスがこうした変化を体験していることもあり、日本と重ねて見ることも参考になる。

戦後の人口集中は機械産業を中心に拡大していったが、今後はどうなるのか。工場誘致で拡大した国土は生産拠点の海外への移転で衰退を余儀なくされるだろうし、そうなると労働者はサービス業を中心とした雇用を確保するために人口が集中する所に吸引されるようになる。従って人の集まるところにはさらに人口が集中し、過疎が各所で発生するようになる。とりわけ製造業を中核としていた工業都市の状況は国際競争に勝てない産業を中心に操業停止や事業所の整理などと共に住居すら見捨てられる結果となる。そして市街地は衰退する。

戦後、地方の核都市を中心に工業団地と住宅団地が並行して開発され、新しい居住地としてのニュータウンが拡大していった。その関係で旧市街地が衰退して沿道型商業拠点が延びていった。こうした市街化の進展が今後は反対方向のベクトルとしてフラッシュバックのような衰退の方向を辿るのか、それとも全く別の方向を示すのかが議論になる。多くの地方都市でコンパクトシティ構想が提案されるが、残念ながら旧市街地を中心とするコンパクトシティ構想は成立しないと考えている。というのも生活をベースとした都市規模はすでに拡大していて、決して居住者は過去の都市形態を求めていないことに尽きると考えている。

今後の住まいと市街地のあり方は、現代的な居住スタイルに適した居住地をベースにして商業業務地が広がるという構造になる。つまり簡単に言えば生産基盤を中心とした街づくりではなく、自分たちの蓄えを消費する、内需型、貯蓄消費型の社会が成立するように思う。輸出による利益の確保の優位はまもなく終わり、年金や貯蓄の消費をベースにした内需産業にシフトする。こうした場合には居住がベースになり、住みたいと思う場所で人々は居住し、そこを起点に買い物などで消費する社会になる。工場に働きに出るのではなく、居住地に近いスーパーや販売店、介護事業や病院での就労など住まいに近い産業を中核としたまちづくりが必要になる。そこではニュータウンが益々住み良い場所としてクローズアップされることになる。

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このページは、秋元孝夫が2011年12月19日 05:15に書いたブログ記事です。

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